認知症になった母
母が認知症になって三年ほどになる。
認知症になる前は、毎日のようにジムに行って体を動かしていたし、社交的な性格で友人も多かったので、まさか認知症になるとは思ってなかった。
認知症と言っても、物忘れがひどいとか、息子のことを「あなた誰?」と言うとかいったレベルではない。
目は空いていて、多少の反応はするものの、自分で食事を取ることも出来ず、胃ろうで栄養を取っており、全くコミュニケーションが取れない状態が、二年前から続いているのだ。
自分には生みの母と育ての母がいるのだが、認知症になったのは生みの母(育ての母は健在)。
生みの母には内縁の夫がおり、その夫が定年退職になった途端に認知症になった。
若い頃に苦労が多かった分、夫の定年という安心感からそうなったのかは分からないが「これから二人で旅行などに行こうと思っていたのに・・・」と、内縁の夫が嘆いていた。
が、その内縁の夫も、昨年の初秋に亡くなってしまった。
しかし、内縁の夫の死を知ったのは、つい先日のこと。
しばらく見舞いに行けていなかったので、母の誕生日に病院に行こうと思い、その方に連絡してみたら繋がらず、翌日、その方の娘さんから電話があり、「父は亡くなりました」と言われ、なんとも切ない思いになった。
懸命に認知症の母の看病をしてくださってた方だし、自分も、30年近く前からよくしてもらっていたので、せめて葬式ぐらい行きたかったが、その娘さんと交流がなかったので、亡くなって三ヶ月も経ってから知ることになったのだ。
母が認知症でなければ・・・と思っても今更どうしょうもないこと。
現在、認知症を患う方は462万人。10年後には、約700万人(65歳以上の5人に一人)という時代がやってくるというから、誰もが他人事ではない(親だけでなく自分も)。
認知症の発症原因は、いまだ明らかにされていないようだが、親しい仲間内だけで脊髄反射のような会話を続けるのではなく「はじめて会った人と話をするような、ドキドキする感じが多い人ほど、認知症になりにくい」という研究結果があるようだ。
また、認知症には二十年から三十年かけて徐々になっていくらしく、40代から「趣味を持つ、友人をたくさん作る、興味関心を拡げる・・・」などの意識的行動が必要だと言う。
なので、友だち作りをしようとすることはとても重要なことであり、それにチャレンジしようとする行動は、人生を豊かにするだけでなく、認知症予防にもなるのだ。
だからやらない手はない。
今日ほど若い日は、もう二度とない。やるなら今だ。
写真は、母親が今だに肌身離さず持っている、自分たち兄妹の小さい頃(約四十年以上前)の写真。